農業公社は赤字? 決算を詳しく聞いてみました

農業公社は赤字?――決算を詳しく聞いてみました

都市経済分科会での農業公社に関する質疑、第3回です。

前回は、乾田直播や新技術の実証、 農産物の販売、担い手支援など、 農業公社がこれから果たしていく役割について紹介しました。

今回は、もう一つ大事な部分である 「農業公社の経営は大丈夫なのか」 という点を取り上げます。

決算書だけを見ると赤字ですが、 現金の動きや自己資本まで見ると、 また違った姿が見えてきます。

減価償却費が560万円減ったのはなぜ?

令和7年度の決算では、 農業公社の減価償却費が前年度より大きく減っています。

令和6年度:約2,360万円
令和7年度:約1,800万円
前年差:約560万円減
質疑
減価償却費が前年より約560万円減っていますが、 どのような理由なのでしょうか。 また、減価償却費が減っているのに、 最終的な損益があまり改善していないように見えます。 財務面は大丈夫なのでしょうか。
鹿嶋市章 市・農業公社の答弁

コンバインなど、1,000万円単位の高額な農業機械は、 比較的短い法定耐用年数で減価償却するため、 機械の更新時期によって減価償却費が大きく変動します。

つまり、減価償却費が減ったからといって、 単純に経営が改善した、あるいは悪化したとは言えません。

帳簿上は約486万円の赤字

令和7年度の損益は、 約485万8,000円の赤字 となっています。

ただし、その背景には 燃料費や消耗品費などの物価高騰があり、 これらの経費が約500万円増加したとの説明がありました。

また、前年度と比べると、 赤字幅は約158万円縮小しています。

「赤字」という数字だけでは分からない

企業や公社の決算では、 現金の支出を伴わない減価償却費も費用として計上されます。

そのため、 帳簿上の赤字と実際の現金の動きは 必ずしも同じではありません。

本業の現金収支は約1,252万円の黒字

鹿嶋市章 市・農業公社の答弁

帳簿上は赤字ですが、 現金支出を伴わない減価償却費が含まれています。

本業の事業活動収支については、 約1,252万円の現金黒字 となっています。

さらに、手元の現金についても 1億2,000万円以上あると説明されました。

帳簿上の損益:約485万8,000円の赤字
本業の事業活動収支:約1,252万円の現金黒字
手元現金:1億2,000万円以上
次期繰越金:約1,200万円

市側は、 資金ショートの危険性はないとの認識を示しました。

自己資本比率は93.2%

財務の安全性を見る指標の一つに、 自己資本比率 があります。

鹿嶋市章 市・農業公社の答弁

農業公社の自己資本比率は 93.2%です。

正味財産は約2億9,600万円あり、 同種団体で一般的とされる30~40%程度と比較しても、 財務の安全性は高いと説明されました。

少なくとも、 「赤字だからすぐに経営が危ない」という状態ではない、 ということは確認できました。

それでも市から880万円の補助金

一方で、 農業公社には市から 年間880万円の補助金 が支出されています。

質疑
この880万円の補助金は、 どのような手続きや検討を経て決められているのでしょうか。 毎年、公社の決算や事業計画を確認した上で 決定されているのでしょうか。
鹿嶋市章 市・農業公社の答弁

補助金の算出や内容については、 毎年、一般財団法人鹿嶋市農業公社の事業報告、 決算、総会における事業計画などの審議を経て、 承認を得た上で進めています。

公社の財務状況が比較的安定している中で、 今後も同じ形で市の補助金を出し続けるのか。

ここは、今後も確認していく必要があると考えます。

約9,000万円の基本財産をどう使う?

もう一つ大きな論点となったのが、 農業公社が持つ 約9,000万円の基本財産 です。

質疑
約9,000万円の基本財産などを 定期預金として持っているだけではなく、 保冷庫や倉庫などの設備投資、 あるいは自主事業への投資に使い、 より自立した経営につなげることはできないでしょうか。
鹿嶋市章 市・農業公社の答弁

これまでは 「9,000万円の資本には手をつけない」 という考え方がありました。

しかし今後は、 健全な内部留保や資金力を生かし、 設備投資などへ有効活用できるよう、 公社側と具体的な検討・話し合いを始めていきます。

貯めておくのか、農業のために使うのか

農業公社には、 比較的厚い自己資本と現金があります。

もちろん、 公的な性格を持つ組織ですから、 資金を安易に使えばよいというものではありません。

一方で、 前回の記事で紹介したように、 農業公社には今後、 保冷庫・倉庫の整備や新技術の実証、 農産物の販売強化なども求められています。

資金力を「地域農業への投資」に変えられるか

十分な資産を持ちながら、 毎年市から補助金を受けるだけではなく、 公社自身の資金も活用しながら、 将来の収益につながる設備や事業に投資していく。

そのバランスをどう取るのかが、 今後の重要な課題だと思います。

受託作業の収入が減った理由

令和7年度は、 農作業の受託収入にも変化がありました。

質疑
受託作業の減収は一時的なものなのか、 それとも構造的な傾向なのでしょうか。 また、ライスセンター使用料が増えている理由は何でしょうか。
鹿嶋市章 市・農業公社の答弁

令和7年度は、 大口法人からの作業依頼がなかったことや、 一般農家が自分で作業を進めることができ、 応援作業の依頼が減ったことが要因です。

一方、ライスセンター使用料が増えたのは、 主食用米を作る農家が増え、 乾燥・調整の作業パックの利用が増えたためです。

物価高騰への対応として、 令和8年4月1日から 受託料や施設使用料を値上げしています。

委員会で出された意見

農業公社は高い資産と財務の健全性を持っているため、 将来にわたって市からの補助金に依存し続けるのではなく、 独自に営業・経営していけるような戦略やあり方を、 市と公社で検討すべきとの意見が出されました。

「赤字か黒字か」だけで見ないことが大切

今回の決算を見ると、 農業公社は帳簿上では赤字です。

しかし、 本業の現金収支は黒字で、 自己資本比率も高く、 手元資金も確保されています。

つまり、 「赤字だから経営が危険」という単純な話ではありません。

一方で、 これだけの資産を持つ公社が、 毎年市から補助金を受けながら、 どのように自立性を高めていくのか。

そして、 約9,000万円の基本財産や内部留保を、 保冷庫や倉庫、新技術の実証など、 将来の農業につながる投資へどう活用していくのか。

「守るための資産」から 「地域農業を支えるための資産」へ という視点も、 今後は必要になってくるのではないかと思います。

農業公社が持つ資産と機能を、 鹿嶋の農業のためにどう生かしていくのか、 今後も注目していきたいと思います。

※令和7年度決算審査・都市経済分科会での質疑及び答弁をもとに、 読みやすいよう要約・整理しています。

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