鹿嶋市役所で生成AIはどう使われている?――答弁書・DX・情報管理を考える

鹿嶋市役所で生成AIはどう使われている?――答弁書・DX・情報管理を考える

令和7年度決算の総務生活分科会の資料を読むと、 市役所のDXや生成AIについて、 かなり具体的な質疑が記載されています。

生成AIは、 一般質問の答弁書作成にも使われています。

一方で、 個人情報を入力してしまわないか、 AIが間違った回答を出した場合にどうするのか、 システム導入によって本当に費用や時間が削減できるのか、 といった課題もあります。

今回は、 鹿嶋市役所で進んでいる 「行政DXの現在地」 を資料から整理します。

一般質問の答弁書にも生成AIを活用

資料に記載された質疑
生成AIの活用が進んでいますが、 議会の一般質問に対する答弁書作成では、 どのように使っているのでしょうか。
鹿嶋市章 市の答弁

AIに依存して答弁を作るのではなく、 職員の判断のもとで、 答弁書作成工程を短縮するために 活用しているとのことです。

質問の趣旨整理や答弁の骨子など、 人の判断が必要な部分については、 職員が責任を持って行っています。

AIを活用しているのは、 主に次のような作業です。

過去の答弁:検索・整理
社会情勢:情報検索・整理
行政が保有するデータ:検索・分析
生成した文章:校正
AIが「答弁を決める」のではない

資料で示されている使い方は、 AIに判断そのものを任せるのではなく、 検索や整理、文章作成の補助として使うものです。

最終的な判断と責任は、 あくまで職員が担うという整理になっています。

システム標準化の改修費は約6,400万円

行政DXでは、 国が進める自治体システムの 標準化・共通化も大きな事業です。

資料に記載された質疑
システム標準化に伴う委託費や ガバメントクラウド利用料は、 令和7年度だけの費用なのでしょうか。
鹿嶋市章 市の答弁

令和7年度には、 通常のシステム運用費とは別に、 標準化対応の移行費用として 約6,400万円のシステム改修費 を執行しています。

この費用は国庫補助事業の対象で、 令和7年度限りの一時的な経費です。

ただし、移行後の運用費は増える

鹿嶋市章 市の答弁

標準化への移行後は、 新たにガバメントクラウドの利用料が発生します。

そのため、 システム運用経費全体は、従来より増額している とのことです。

DX=必ず経費削減、ではない

行政システムをデジタル化・標準化すれば、 必ず予算が減るというわけではありません。

安全性や利便性を高める一方で、 クラウド利用料など 新しい費用が生じる場合もあります。

費用だけでなく、 サービスや業務の改善も含めて 効果を見る必要があります。

標準化で何が変わる?

資料に記載された質疑
自治体システムを標準化すると、 どのような効果が期待されるのでしょうか。
鹿嶋市章 市の答弁

業務プロセスも含めて標準化することで、 不要な機能や作業を減らすことができます。

また、 国が管理するガバメントクラウド上で 運用することによる 安全性の確保も効果として挙げられています。

このほか、 オンライン手続の拡充や、 災害時に自治体間で応援しやすくなること なども期待されています。

DXで削減した時間は「人員削減」が目的ではない

DXを進めると、 「人を減らすためなのでは?」 という疑問も出てきます。

資料に記載された質疑
DXによって仕事の時間が削減されていますが、 その分、職員数は減っているのでしょうか。
鹿嶋市章 市の答弁

人員削減そのものが目的ではありません。

将来的な生産年齢人口の減少に備え、 DXによって生み出した時間を、 本来力を入れるべき仕事へ振り向ける ことを目的としています。

市では、 これまで文書作成などにかかっていた時間を、 市民サービスの向上、政策立案、重点プロジェクトの進捗管理 などへ振り向けられる環境になってきたとしています。

「何時間減ったか」はどう計算する?

DXによる削減効果については、 算定方法も説明されています。

鹿嶋市章 市の答弁

削減時間は、 主に2つの方法で算出しています。

① 電子申請・RPAなど
従来の処理時間とツール導入後の処理時間との差を出し、 1件当たりの削減時間×年間処理件数で算出。
② 生成AI・業務用チャットなど
システムの利用ログを分析し、 利用状況から効果を算出。

全職員が使える生成AIは「無償」

AIの利用料についても 質疑が記載されています。

鹿嶋市章 市の答弁

全職員が利用できる生成AI基盤は、 自治体向けの無償基盤で、 1,000アカウントまで利用可能 となっています。

この部分については、 利用コストは発生していません。

一方、 高度な処理が必要な有償製品については、 必要な部署だけに アカウントを設けています。

個人情報を入力すると警告

資料に記載された質疑
職員全員が生成AIを使えるようになると、 個人情報や機密情報を入力してしまう危険や、 AIが誤った回答をする 「ハルシネーション」の問題もあります。

どのように管理しているのでしょうか。
鹿嶋市章 市の答弁

庁内向けの利用ガイドラインを作成し、 職員に遵守させています。

また、 個人情報を入力しようとすると警告が表示される仕組み を採用しています。

ただし、 すべての利用を個別に監視することは難しく、 AIの回答内容については 利用する職員自身が 事実確認を行うことが重要だとしています。

そのため、 今後も職員への教育を続けるとのことです。

同じシステム会社への依存は大丈夫?

行政システムでは、 長期間同じ事業者を利用することで 競争性が失われないかという質疑もあります。

鹿嶋市章 市の答弁

住民記録などを管理する主な事業者については、 過去の比較検討を踏まえ、 現行事業者を評価して継続しています。

今後も定期的に評価し、 特定事業者に固定するものではないとしています。

また、 システム標準化が完了すれば、 業者間の移行もしやすくなるため、 競争性が高まることも期待されています。

外注だけでなく「内製化」も検討

市では、 すべてのシステムを外部に委託するのではなく、 自分たちで対応できる部分についても 検証しています。

鹿嶋市章 市の答弁

生成AIの進化によって、 今後はシステムの内製化が しやすくなることも見込まれています。

部分的な内製化によって、 全体コストの削減も検討しています。

AIを使える人材も必要

システムを自前で作れるようになれば、 外注費を抑えられる可能性があります。

一方で、 それを使いこなせる職員や、 安全性を確認できる人材も必要になります。

資料でも、 投資規模と人材のバランスを見ながら DXの効果を高めていく考えが示されています。

資料に記載された主な委員意見

・AIと人間の判断の線引きを十分に整理しながら活用すること。
・DXによる職員負担軽減を、職場環境の改善にもつなげること。
・システムをできるだけ内製化できるような体制を目指すこと。
・長期間同じ事業者と契約することで競争性が失われないよう、競争入札や契約のあり方も検討すること。

AIは「人の代わり」ではなく「人の仕事を助ける道具」

総務生活分科会の資料を見ると、 鹿嶋市でも生成AIやDXが 具体的な業務に使われ始めています。

一般質問の答弁書でも、 過去答弁や行政データの検索、 情報整理、 文章の校正などに AIが利用されています。

一方で、 質問の趣旨整理や答弁の骨子など、 判断が必要な部分については 職員が責任を持つという考えが示されています。

また、 システム標準化では 約6,400万円の改修費がかかり、 移行後はガバメントクラウド利用料によって 運用費が従来より増えているとされています。

DXの目的は、 単純に職員を減らすことではなく、 生み出した時間を本来力を入れるべき仕事へ振り向けること。

AIやデジタル技術を導入したことで、 何時間の仕事が減り、 市民サービスや業務がどう変わったのか。 そして、そのためにどれだけの費用がかかったのか。

導入そのものだけでなく、 その効果を数字で確認していくことも 重要だと思います。

※令和7年度決算審査・総務生活分科会委員長報告別紙に記載された質疑・答弁・意見をもとに、読みやすいよう要約・整理しています。

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